Aloha Knowledge Vol.5

第5回_ラーイエイカヴァイ2

Vol.5_Lāʻieikawai 2

執筆 神保滋

 前回に引き続き、ラーイエイカヴァイのお話です。

 アイヴォヒクプアやカウアカヒアリイといった王族たちがこぞって求愛をするラーイエイカヴァイって、そもそも何者? なぜ、誰をも夢中にさせるほど美しかったの? 気になりますね。そこで、彼女の伝説を、もう少しみていくことにしましょう。実は、ラーイエイカヴァイの物語って、とても長いんです。途中にポリアフの失恋話や歌の「カ・ピリナ」のエピソードが挟まりますが、それは物語のほんの前半部分。話はずっと続きます。そこで、まずここでは、彼女の正体がわかる伝説の冒頭を中心に紹介したいと思います。物語は、こんな風に始まります。

 

 昔々、オアフ島の東海岸を統治する王がいました。王は跡継ぎの息子を妻に望みましたが、生まれてくるのは女の子ばかり。失望で我を失った王は、女の赤ちゃんを毎回捨てさせていました。悲しみにくれる妻。そんな中、妻は再度身ごもります。もし今度も女の子だったら……妻は恐れおののきます。そのとき、お付きのカフナ(神官)である老婆が助言をします。

 “もし女の子が生まれたら、安全な場所にかくまいましょう。王にはもう捨ててしまったと言えばいいのです”。

 そして手はずは整えられ、出産のときがきます。ところが、またしても女の子。しかも双子が生まれます。ふたりには、ラーイエイカヴァイとラーイエロヘロヘと名前がつけられました。そして、王に見つからないよう、双子はすぐ別々に安全な場所へと運ばれていきました。

 ラーイエイカヴァイには、当のカフナが付き添いました。隠れ場所は泉が湧き出る秘密の洞穴でした。そして誰にも見つからずに、彼女は美しい少女へと成長していきました。ところが、ラーイエイカヴァイは神々に祝福された聖なる女性でした。彼女がいる場所には、いつも虹がかかったのです。ラーイエが歩くと、虹も彼女を追いかけてくるのでした。これでは、いつか彼女の存在がバレてしまうと考えたカフナは、オアフ島を離れ、ハワイ島へ向かうことにします。

 カフナとラーイエが着いたのが、ハワイ島プナの森のあるパリウリという聖地でした。ふたりはパリウリで、鳥の羽毛に囲まれた美しい家を住まいにして暮らし始めます。

 ところが、時すでに遅し。常に虹を背負う美しい少女の存在は、少しずつ噂になっていたのです。また、ハワイ島に向かう航路で、カヌーを操っていた男がラーイエの顔を見てしまいます。彼女の顔はタパのシーツで隠されていましたが、シーツがはためき一瞬顔が見えてしまったのです。今まで見たことのない美しさに男は呆然とし、その話はあっという間に広まってしまったのでした……。

 

 そして、噂はカウアイ島まで伝わり、カウアカヒアリイらの耳に入っていった、というわけです。

 本来なら愛情を注ぐはずの父親から殺されそうになった悲劇の娘。母親からも遠く離れ、親子のぬくもりを知らずに育ったのがラーイエイカヴァイです。唯一、親代わりの愛情を注いでくれたのは、老婆のカフナひとりだけ。だからこそ、多くの男が言い寄ってきても、由緒正しい王族といえども、簡単には受け入れることはできなかった。男性に対して、彼女の心は固く閉ざされたままだったのかもしれません。

 

 ラーイエイカヴァイの歌には、曲名がズバリの「ラーイエイカヴァイ」があります。2007年にリリースされたホークー・ズッタマイスターのデビューアルバムに収録。このアルバム「ʻĀina Kūpuna」で、ホークーは翌2008年ナーホークー・ハノハノ・アウォードの新人賞(Most Promising Artist of the Year )を含む六冠を獲得しました。2007年はライアテア、ウェルドン・ケカウオハ、ナープア・グレイグ、クウイポ・クムカヒなどそうそうたるメンツがアルバムをリリースしていましたから、ベテラン勢をおさえての六冠は本当に素晴らしいと思います。そのとき「ラーイエイカヴァイ」がヒットしたのも、きっと貢献しましたね。

 「ラーイエイカヴァイ」の作者は、やはりこの方。フランク・カワイカプオカラニ・ヒューエットです。今回は、その一番二番の歌詞対訳を載せました。というのは、まだ紹介していないエピソードが三番に出てくるからです。

 なんと、そんなラーイエにも、とうとう彼氏が……はたしてラーイエに幸せは訪れるのか……。どんな話が展開するのか、続きは次回を楽しみにして下さいね。

 

 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。次回のアロハ・ナレッジでお会いしましょう。

 

対訳

ʻieikawai

by Frank Kawaikapuokalani Hewett

対訳:神保 滋

 

ここにラーイエイカヴァイが

エオー

はるか山奥 パリウリに住む

美しい  一番のひと

パリウリの

 

くつろぎます  王女は

エオー

翼に囲まれて  鳥たちの

美しい  一番のひと

パリウリの