Aloha Knowledge Vol.2

第2回_雪の女神 ポリアフ

Vol.2_Poliʻahu〜 Goddess of Snow

執筆 神保滋

 

 ハワイと聞くと、常夏をイメージされる方は多いと思います。その通りなんですが、実はハワイの気候はもっと多様です。日本のように暖房がついている家があるんです。意外ですね。なぜ暖房が必要か? それは、高い山があるからです。ハワイには、3000メートルを超える山がマウイ島にひとつ、ハワイ島にふたつあります。しかも、ハワイ島の山、マウナケアとマウナロアは4000メートル超えです。ハワイと言えども、山を1000メートルも登れば涼しくなってきます。そうしたエリアの家には暖炉があったりします。昼間、海パン一丁で泳いだあとに、夜はロッジで暖炉に薪をくべる……実際、僕はそんな体験をしたことがあります。5月のハワイ島だったのですが、あれはとても不思議な感覚でした。ここは一体どこなんだろうって。

 4000メートルですと、富士山よりも高い。常夏の島であっても冬になると山頂は雪に覆われます。マウナケアとは“白い山”のこと。確かに、冬の時期にハワイ島へ行くと、山肌が白いマウナケアを眺めることができます。そして、その山頂に住んでいるのが、雪の女神ポリアフです。常夏の島にいる雪の女神。そんな女神は、もしかしたらハワイ以外にいないかもしれませんね。

 

 雪の女神ポリアフが住むのがマウナケア。そのちょっと離れたところには、火山があります。今も活動を続けるキーラウエア火山です。そして、その火口に住んでいるのが、あの女神。そう、火の女神ペレです。ひとつの島に、しかもほぼご近所に火の女神と雪の女神がいる。そんな島は間違いなくハワイだけでしょう。火と雪は相対する存在です。つまり、ペレとポリアフは決して相交わらない者同士。永遠のライバルです。ペレの神話は数多いですが、その中にポリアフと戦う話も当然あります。火攻めに雪で対抗するバトル。勝つのはどちらでしょうか。気になりますね。でも今回は、ペレとポリアフの話はひとまず置いて、別の神話を紹介しましょう。ポリアフ、悲恋の物語です。

 ポリアフは、カウアイ島の王族の男に恋をしてしまいます。人間の男に。それは、決して実らない恋。しかも相手には別の許嫁がいたのです。いや、それ以上に悲しいのは、男には本命の別の女性がいました。なんとポリアフは3番目のキープ……女神をキープにするなんて、男も命知らずです。まあ実際、罰を受けるわけですが。こんなお話です。

 

 ハワイ島パリウリには絶世の美女ラーイエイカヴァイが住んでいました。そのうわさをカウアイ島で聞きつけたアイヴォヒクプアは、ラーイエイカヴァイに求婚するため、はるばるハワイ島までやってきます。しかし、彼女に会うことすらできませんでした。

 その失意の中、アイヴォヒクプアはポリアフと出会います。恋人同士となったふたりは、マウナケアのふもとで愛し合います。ポリアフにとって幸せなひととき。しかし、ラーイエを諦めきれないアイヴォヒは、ポリアフのもとを離れて、ラーイエに再度アタックを開始します。しかし、完全にフラれたとき、アイヴォヒは再びポリアフのもとに帰ってきました。そして、ポリアフは、彼の故郷カウアイ島に行って結婚をすることになりました。

 めでたしめでたし……にはなりませんでした。実はアイヴォヒには、ハワイ島の前に寄ったマウイ島で、その島の王女と結婚の契りを交わしていたのです。その王女が突如、ふたりの結婚式に現れます。式は当然中止。許嫁として正当性を主張する王女を見て、ポリアフはそっと姿を消します。人知れずマウナケアに戻ったのです。

 その後仕切り直しとなり、アイヴォヒと王女の結婚式が開かれました。そのとき突然、ふたりを熱波と寒波が交互に襲ってきました。ポリアフが仕返しをしたのです。恐ろしくなった王女はマウイ島へ逃げていきました、そして、アイヴォヒはすべての女性を失ったのでした。

 

 ひどい男、アイヴォヒクプアに罰を与えたポリアフ。でも、裏切り行為をされたあとでも、彼女は心の中でいつまでも彼のことを愛していたのかもしれません。そんなせつない女心を歌ったフラソングを最後に紹介しましょう。フランク・ヒューエット作「ポリアフ」です。

 

 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。次回のアロハ・ナレッジでお会いしましょう。

 

対訳

 ポリアフ

Poliʻahu 

by Frank Kawaikapuokalani Hewett

対訳:神保

 

涙するポリアフ

胸が痛む  彼を思うと

悲しい  去ってしまったから

アイヴォヒクプアが

 

戻ってきて  愛しいひとよ

 戻ってきて  一緒になって

 戻ってきて

 戻ってきてあなた

 戻ってきてあなた

 

とても寒い  雪降る聖地

マウナケア山

もういない  愛するひとは

暖めてくれる彼は

 

彼を愛した思い出

あの過ぎた日々を

涙にしまう  その瞳に

さみしくてたまらない

 

あなたは愛しのレイ

わたしをかざる

この胸から  離れない

季節が過ぎようとも