Aloha Knowledge Vol.3

第3回_ホーポエ

Vol.3_Hōpoe

執筆 神保滋

 フラの発祥はどこ? 誰が始祖? フラを学び初めると、やがて聞く機会があると思います。ある伝説では、フラを広めたのはカウアイ島のラカだそうです。いや、ラカの前に、モロカイ島のライライが始祖だ、という伝説もあります。確かに、カウアイにはラカを祀るヘイアウがあり、また、フラ発祥の祝祭「カ・フラ・ピコ」がモロカイ島にあります。さて、どちらが正しいのでしょう……正解は、どちらも正しいです。いえ、これは白黒をつける問題ではないのですね。

 聞いたところ、オアフ島ではオアフからフラが始まり、マウイ島ではマウイが始まりなのだそう。つまり、各島にフラ発祥伝説があるようなのです。そして、それぞれの伝説を継承しているクムフラがいます。日本だと、元祖をめぐって論争が起きそうですが、ハワイでは起きません。クムフラは、よそを決して否定しません。伝統は枝分かれして再構築される、ということを理解しているんです。歴史上は、確かに誰かが始めたのでしょう。でも、それはそれ。お互いのフラ・ツリー、各島の継承文化を尊重し合っているのですね。

 では、ハワイ島のフラの始祖は誰か。ちゃんと伝説が残っています。しかも、ペレとヒイアカ伝説の中に。

 ペレは、妹たちを連れて海へピクニックに行きます。すると、海岸で見知らぬ女性が踊っているのを見ます。それは、今まで見たことがない踊り。ペレは妹たちに、同じように踊れる者はいないか聞きます。誰も答えません。すると末の妹のヒイアカが、詠うことはできるとチャンティングを始めます。チャントに合わせて、見知らぬ女性は踊り続けます。それがきっかけとなって、ヒイアカとその女性、ホーポエは無二の親友になります。そして、ホーポエはヒイアカに踊りを教え、ふたりでペレの前で踊ったのでした。その踊りがフラであり、ホーポエがフラの始祖である、という話です。すると、ヒイアカは生徒第一号になりますね。

 フラをこの世で最初に踊ったホーポエ。しかし、彼女には悲劇が待ち受けていました。

 ペレには遙かカウアイ島に、王族のプリンスの恋人がいました。ある日、ペレはヒイアカに、カウアイ島まで行って恋人を連れてくるように命令します。ヒイアカは姉の命令に従い、困難が待ち受けるカウアイまでの旅に出かけます。その前に、ヒイアカはペレにひとつのお願いします。それは、ヒイアカが留守の間に、プナの森には決して溶岩を流さないこと。プナは、ヒイアカが愛するレフアの花々が咲き誇る美しい森。そして、親友のホーポエが住んでいる場所です。ペレは約束を守るとヒイアカに伝えます。しかし、無情にも、ペレはその約束を破るんです。

 ヒイアカは無事にカウアイ島に到着、ペレの恋人とともにハワイ島へ向かっていたときです。しびれをきらし、妹へ勝手に嫉妬をしたペレは、キーラウエア火山を噴火させ、プナの森に溶岩を流してしまいます。プナは火の海となり、すべてが焼き尽くされます。ホーポエは押し迫る溶岩から逃れようと、海へと向かいます。しかし、とうとう海岸で溶岩につかまり、ホーポエは岩のかたまりになってしまったのでした。

 ホーポエの岩は海岸の磯にぽつんと置かれ、風が吹くとゆらゆらと揺れたそうです。まるでフラを踊るように。その岩は実際に、ハワイ島のハーエナ・ビーチに存在していたそうです。しかし、現在はなくなっています。津波がハワイ島を襲ったことがありますから、波がさらっていったのかもしれません。

 この悲しい伝説をテーマにしたハワイアンソングがあります。カワイカプオカラニ・ヒューエット作の「ホーポエ」です。ずばり、彼女の名前がタイトルになった歌。以下に対訳を載せました。伝説を知ると、歌詞の意味、歌われている光景が理解できますね。

 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。次回のアロハ・ナレッジでお会いしましょう。

対訳

 ホーポエ

 Hōpoe

by Frank Kawaikapuokalani Hewett

対訳:神保滋

 

火の波のキーラウエア 火の波のプナ

覆うペレの溶岩

赤い海 オレンジの海

ペレが通る火の道

 

すすり泣く

すすり泣く

むせび泣く

 

嫉妬の波がすべてを砕く

レフアの森を滅ぼす

泣くホーポエはハーエナへ向かう

生きるすべはひとつもない

 

灼熱のキーラウエア 灼熱のプナ

ペレの噴き出す炎

 ホーポエをレフアを守るはずなのに

愛する人を守ると